25.釉薬の選び方



「どの釉薬にすればいいかわからない」という声が、時々聞かれます。

そこで、使う釉薬をどう選んでいけばよいか、考えてみました。
まずは色、次に、光沢/マット、それから、釉薬の特徴・・・
その順番で、教室にある色見本を見ていくと、使いたいものをスムーズに見つけられるはずです。

※ご自分の作品に使われているのと同じ粘土の発色を見てください。
※焼成方法(OF/RF)を必ず確認してください。




白っぽい色・青っぽい色・黄色っぽい色・赤っぽい色・黒っぽい色・・・または、透明っぽい色。
どれがイメージに近いですか?

上のどれかに決まったら、教室内に置いてある色見本から、
更にどの色がいいかを絞り込んでください。

その時に注意して頂きたいのが、素地土の色のこと・・
釉薬の発色は、下地の土の色に影響をうけます。

画用紙に絵の具を塗る場合でも、
白い画用紙と茶色い画用紙では色の見え方が違ってきますが、
白土・赤土・黒土の場合も、それと同じ。
必ず、ご自分の作品と同じ土での、発色を見てください。




光沢があるのがいいのか、つやのないマット状がいいのか?

マット状になるものは、白マット・黒マット・伊羅保・青銅・黄そば・飴マットと限られています。

また、木灰は、薄くかかったところにはツヤがでて、濃いところはマットになります。




色は同じに見えても、特徴の違う釉薬があります。
特徴の違いは、雰囲気の違いです。よく見て、好みを見つけてください。


濃淡あり→白萩・青萩・織部・トルコ青・紅志野・ピンク・黄瀬戸

濃淡なし→乳白・ルリ・黒天目・白マット・黒マット・カナリヤ黄

貫入入り→ビードロ・土灰(特にRF)・志野・トルコ青

色彩の混ざり→青銅・伊羅保・鉄赤・黄そば



ここまで来れば、大抵は使ってみたい釉薬が決まってくるはず?

けれど、それでもまだ決まらないという方は・・
きっと、ご自分の頭の中に、実現したいイメージがあるのかも知れません。
その場合は、講師やスタッフにご相談ください。


複数の色を重ねることで、釉薬の可能性は広がります。
ただし釉薬は、絵の具と違って色々と焼成による制限もあり、
イメージ通りに仕上げるやり方が見つかるとは限りませんが・・
それでも、色々挑戦してみることで
かえって思いもよらず良い表情が、得られるかもしれません。
うまくいくかも知れず、いかないかも知れず。
その辺が、陶芸らしい面白さかも、知れません。







26.釉薬の種類



釉薬の発見は数千年前。
素焼きの器を焼成中に、ふりかかった灰が
とけてガラス状になったのに気づいたことから、といわれています。

高温の中で土と灰が一緒になれば、ガラスになります。

原料は、土と灰。
それに、着色料として微量の金属や顔料を足したもの。
それが、釉薬です。


長い歴史を経て、今では様々な釉薬が、私達の手元にあります。

それらを、東洋系と西洋系のもので分けてとらえてみるとそれぞれの良さの引き出し方もみえてきます。


@伝統・民芸系

黒天目・油滴天目・織部・黄瀬戸・志野
    紅志野・白萩・青萩・ビードロ・土灰・木灰



東洋の国々の陶業地で作り出されたもの。
その土地で採れた原料をそのまま使って生み出された釉薬なので
濃淡による変化に富んだ表情が自然に出やすく、それが良さでもある。
昔のやきものを見ると、粘土の選び方や釉薬のかけ方など
その持ち味・良さの引き出し方の参考になります。


A西洋・現代系

透明・乳白・ピンク・カナリヤ黄・トルコ青
    ルリ・白マット・黒マット・鉄赤・青銅・黄結晶



西洋的な色彩感覚のもとに、化学的な調合技術で作られた釉薬。
自分のイメージにあわせて色や質感を上手に使ってください。






27.クラアート21・取り扱い釉薬一覧



クラアート21で使って頂いている釉薬の、特徴や扱い方を下に示しています。
これは1250℃で焼成をした場合の、あくまで基本的なデータです。
実際には、焼成状態や作品の条件、作業の仕方によって、
色味や質感の出方には幅があります。
それをご理解の上で、釉がけ時の参考にしてください。

また、このデータはクラアート21の窯でクラアート21取り扱いの釉薬を使用した場合にのみ有効です。
他の窯の場合には、同じ名前の釉薬であっても得られる色味や扱い方は変動するため、あてはまらない部分もあります。
ご注意ください。




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28.釉がけ前後の大事なポイント



作品の底部には、釉薬をつけません。
底部についていると、焼成中にその部分の釉薬もとけて、窯内の棚板に作品がくっついてしまうからです。

そこで、釉がけの前に撥水剤をぬっておいたり、または、釉がけの後に底部だけスポンジでふき取ったりして
絶対に、底部に釉薬をつけないこと。

それから、底部と同様に、底際にも釉薬をつけないこと。
この2つの気配りは、非常に肝心です。


底際というのは、底のへりと、そしてそこから数ミリ上までの側面のこと。

その底際になぜ釉薬をつけてはいけないか?
それは、釉薬は焼成中に下方へ少し流れるもの…だから。
底際に釉薬がしっかりついていると、それは結局、底面まで届いて流れてしまう。


実は、釉がけにある程度慣れてくれば、ギリギリまで釉薬をつけることもできるようになります…!
(次の項目ではその技を紹介♪)

…けれど、初心者のうちは、底面から1センチ弱上までは釉薬をつけないようにしてください。


もし高台がついているなら、高台全体を撥水(ふき取り)してしまうのが簡単ですし、
(※内側も忘れずに!)

高台のない作品であれば、まず平らな台の上にその作品を置いて、真横から底部を見てください。
そして、底面から垂直に1センチ上までは必ず撥水(ふき取り)するように、します。



せっかくつくった作品が棚板に焼きついてしまっては、残念…
それに、棚板も被害をこうむります。

釉がけ前後のちょっとした気配り、どうぞよろしくお願いいたします。







29.底際まで釉薬をつけてきれに見せるには



底面と、底際には釉薬をつけない。

それが、釉がけ前後の作業の基本です。
(あらかじめ撥水しておいても、あとからスポンジでふき取ってもどちらでもいいのですが)


そしてもし、釉がけにだいぶ慣れてきたなら…では、次の技に挑戦してみましょう!
(まずは流れにくい透明や土灰、乳白、白マット、黒マットなどで)


@ 底面全部と、底際の底角だけを撥水する。
(底角は、筆の毛先ではなく筆の腹で軽くなでるようにするとうまく角にだけ塗れる。)

A 釉がけをする。

B 底際についた釉薬の厚みを、削りとる。
爪かカンナで、底面から上0.5センチまでの釉薬の厚みを、下に行くほど薄くなるようにします。

C 仕上げに、撥水した底面と底角を、スポンジできれいにふく。



3番目がポイントです。
これで、底ギリギリまで釉薬がつけても、下まで釉薬が流れるのをちゃんと防げます。
作品をより美しく仕上げるための、ちょっとした技!です。


やや流れやすい白萩・織部・カナリヤ黄・ビードロなどは、底面から1センチ上くらいまでを同じように削ってください。

そして流れやすい鉄赤やトルコ青、岸本織部などは…
どの位上まで削るかは、使われている粘土や作品の形状によって違ってくるのでスタッフにご相談ください。
ただし、かなり上級者でない限り、できればこの技には挑戦しないでください。







30.釉がけのポイント「かける厚み」


釉薬をかける時の一番のポイントは、「かける厚さ」です。

その釉薬の、標準的な色が出る厚さ…というのがあります。まずはそれを覚えてください。
それを覚えれば、あとは好みにあわせてそれより厚く・または薄くするなどして色の濃淡をつける事ができるようになります。


では、どの位の厚さで釉薬をかければいいのか?
実は、それが釉薬によって少しずつ違うから、なんだか少し難しく思えてしまうのです…よね。


でも、一度に全部の釉薬の「適切な厚さ」を把握する必要は…ない!
使う釉薬の「適切な厚さ」だけを、釉薬の表をみて毎回確認すればいいのです。

そして、同じ釉薬を使うことが重なれば、その「厚み」は体で覚えられていき、
それを基準に、他の釉薬の「かける厚み」も、次々に楽に覚えられるようになっていきます。
だから、あんまり難しく考える必要はありません…ご安心を♪



標準厚(適切な厚さ)
ハガキ2枚分(=約0.5mm)を基本の厚さとしています。

基 本

少し厚め

少し薄め

透明・乳白・志野(OF)
白マット・土灰
木灰(OFのみ)
黄瀬戸・黄結晶
カナリヤ黄・織部
ルリ・青銅
青萩・黄そば
トルコ青(底近くは薄く)
黒マット
白萩・ビードロ
志野(RF)・ピンク
青萩・黒天目
油滴天目
紅志野・ひいろ
鉄赤・いらぼ






31.絵付けのススメ



器に絵をかく、というとためらいたくなる人も…
線やもようをちょっと加えるだけなら、簡単にできますよ♪
アクセントになり、彩りも華やかになってとても楽しいものです!

そしてそのうちに、筆の動かし方や絵の具の使い方のコツがわかってきたら
細かい模様やちょっとした絵も段々描けるようになっていきます。

絵付けは、誰でも楽しめる装飾法…、ぜひ気軽にやってみてください!



ところで、絵付けには2種類あります。
釉薬の下に描く、のが下絵付け。
釉薬の上に描く、のが上絵付け。

クラアート21内では下絵付けのみができます。
(上絵付けは、材料の管理や焼成の面で難しいため取り扱っていません。)












32.下絵具について



下絵具とは、下絵付け用の絵の具のことです。

釉薬の下に、絵の具で描くから、下絵付けといいます。
(作業順序は、絵の具で描いてから釉がけ…と、逆ですね。)


では、どんな色があるかというと実は、色鉛筆とか、水彩のように何でもあるという訳ではありません。

なぜなら、陶芸用絵の具は、1200℃以上の炎を受けるのです…!
その温度に耐えて、しっかり発色する原料からしか絵の具を作り出せないのです。それで、色の制約があります。

900℃以下、であれば結構色んな色が作り出せるのですが…
らくやき屋さんに色々な色があるのは、その温度で焼くやきものだからです。


そんなわけで。
1200℃以上の炎をくぐりぬける、とっても頼もしい?下絵絵の具さんたちを、では紹介いたします。


まずは…なんと1500年以上も前からずっと活躍している!弁柄(ベンガラ)です。主成分は、鉄。
他に、酸化鉄・鬼板という絵の具も、弁柄の仲間。皆、同じように茶色く発色します。

それから、呉須(ゴス)。
これも、世界中で昔から使われています。
土地によって青みは少しずつ違うのが、その土地の風土と感性を伝えてくれています。

そしてその他に…技術の向上により、ピンク、黄、緑、赤…と、あらゆる色、という訳ではありませんがかなりのバリエーションが最近はあります。













33.陶芸の絵付けと水彩画の違い



陶芸の絵付けの場合、水彩画や習字の時とは筆の感じが少し違います。

紙のように平らな面にではなく、丸みや変化のある面に描く…し。
描く面が素焼き(水分を吸い込む)から、筆運びや絵具ののびが少し悪い…

初めて絵付けをする方の中には、そういった感触の違いから
瞬間的に「難しい?」と不安になってしまう方もいたりしますが、
これは何回か描けばすぐに慣れてしまうこと…ご心配いりません


ただし着色する時に、やはり陶芸ならではの注意点も一つあります。

濃くつけすぎないように!気をつけましょう。
絵具が濃すぎると、その上にあとでかける釉薬が焼成中にすべって、ちぢれた状態で焼けてしまうのです。

ですので、どの位の濃さまでならOKか、ということを最初に必ず講師に教わってください。


これは、絵付けの時だけでなく成形の時も、釉がけの時もそうなのですが…
陶芸は「焼く工程があとに控えている」ことを常に考えながら作業する。
それが、とても大事なのです★






34.絵の描き方



ゴス・酸化鉄絵の具を使った描き方を『器の絵付け』(田中見依・著/美術出版社)から紹介します。








調

下絵具が濃すぎると、その上にかけた釉薬が焼成時にすべって剥げてします。

素焼きの破片か新聞紙の上で、前もって濃さを確かめる。


厚みがわかるほど盛りあがったり、描き始めてすぐにかすれるのは、濃すぎる。

ほんの少し着色する程度の薄さでは、発色しないことも。

無理なくすっと筆が伸び、厚みが目立たないくらいがよい。
















使



濃・淡の2色をつくっておけば、立体感のある模様がかけます。

少し濃いめに輪郭線をかくのを骨描き、そのあいだに薄めにのばして色をつけるのをだみ描きといいます。。

骨描きは・・・

細い=うまい、ではありません。
太くても幅と濃さが均一であれば模様はひきたち、線に動きもうまれます。
筆圧と方向を一定にもちましょう。




だみ描きは・・・

うすい絵具をたっぷり含ませた後、穂先を描く面にそっとつけ、
絵具を落す → できた水たまりを穂先で引っ張りながら面を広げる。





ゴスは、消しゴムで消えます。

それ以外の絵具の場合は、カンナの刃先などで色のついている表面部分を削ってとります。
その後、スポンジでその部分をそっと拭いてください。

修正はできればしないで済んだ方が、作品もきれいに仕上がります。

描いた絵にさわると絵の具がよれるので、できるだけさわらないように気をつけましょう。






35.緋だすき(火だすき)



「緋だすき」とは、稲のワラを作品に巻いて焼くと現われる、赤色の模様です。
ワラが作品の表面にしっかり密着しているほどその跡ははっきりと出ます。
ワラが少し浮いていると、赤味がぼんやりと出るか、まったく色が出ないこともあります。

この赤味は、緋色(ヒ イ ロ)(または火色)と呼ばれます。
全国の産地の中では、信楽焼と備前焼がこの技法で有名です。



これをやってみたい方は、次の事柄を参考にしてください。


白系の土の方が、模様がはっきりと現れます。
赤い土でも発色はしますが、やや目立ちにくいです。
ワラをかけたところには、釉薬をかけません。
模様がみえなくなったり、ワラと反応して異物が生じてしまうからです。
けれど信楽土の場合には、作品の内側に釉薬をかけないと
水漏れしたりビールの色・異臭などが染み付いてしまう事になるので、
内側に必ず釉薬をかけた上で、外側にワラがけすることをおススメします。
酸化焼成(OF)の方が、素地土と緋だすき模様の対比がより鮮やかに仕上がります。
ワラ跡の明るい赤味が土の白さに美しく映えます。

還元焼成(RF)では、ワラ跡の赤味が酸化より濃くなるものの
土の色も濃くなるので、ワラ跡は目立ちにくくなります。
半日以上前からワラを水に浸けておき、面の広い棒で叩くと柔らかくなって使いやすくなります。
作品の表面にワラが触れるように、しっかりと巻くことが大切です。
要領を講師にお尋ねください。






36.釉薬がつきにくい時に使う接着剤



例えば、こんな時・・
・一度本焼きしたものに、もう一度釉薬をつけたい
・粉状の釉薬を、そのままつけたい

そんな時に、釉薬用の のり が必要になります。

本焼きしたものは水分をすいこまないので、ふつうに釉薬をかけてもただ流れてしまうのです。
また、粉状の釉薬も、素焼きの素地に粉状の釉薬をくっつける時にも、のりを使います。


使い方は、2通り。必要に応じて使い分けてください。


@ノリを、釉薬にまぜておく
・部分的につけたい時
・どっぷり厚く塗りたい時

Aノリを、作品に塗っておく
・全体につけたい時
・粉状のままで、薬をくっつけたい時
※ノリがある程度乾いたら、浸しがけや吹きがけをします。


★ノリは焼成するとなくなります。
★再焼成の時は、釉薬の発色が弱くなるので、普段の感覚よりも厚めに釉薬をつけてください。







37.素焼き作品用の接着剤



釉がけ前に、素焼きの作品を割ってしまった!
・・そういう時に、役立つお話です〜☆


素焼き用接着剤、というのがあります。

普通の接着剤だと、焼成時に接着剤が焼けとんでしまうから、それを使います。

素焼き用接着剤には、
接着成分の中に、土の粉みたいなものが含まれていてそれがつなぎになってくれるので
焼成しても割れ部分はしっかりとくっついていてくれます。


けれど、強力な接着力も、自然の力には勝てません・・
重力に反するのは、苦手です。
分かりやすく言えば、横の側面にくっつける、というのはちょっと難しい。
上から乗せるようにくっつける、のであれば…うまくいく確率は、高い!

ただし、多少傷跡は残ってしまいます。
それが嫌であれば、本体と同じ土の粉を、接着直後に上から振りかけて割れ目になじませます。



<使い方>

成分(接着成分と土成分)をよく混ぜ合わせてから
両方の割れ目にしっかり塗ります。
そしたらすぐに割れ目を合わせて、
固まるまでの約30秒〜1分、押さえたままで
決して動かさないこと・・これが肝心です。

※接着成分と土成分が適量で混ざっていないと作業は難しくなりますので、
その加減を必ずスタッフに教わってください。

          ↓

手を離せるようになったら、
はみ出ている余分をそっと取り除いておいてください。
5分くらいで、固くなって取れなくなってしまいます。

          ↓

この後、できれば一度素焼きをします。
加熱して初めて、完全な強度が得られます。
もし、素焼きする時間がなければ、
外側から小さなバーナーであぶります。

接着に一度失敗した部分の再接着は難しくなります。
できるだけ1回で接着するようにしてください。





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